こどものなかのこども



客観性を無視したマスゲーム的コラム vol.3

Category : Ikenishinji

告白するが、コラム3回目にしてポンピーは話題に困っている。なんとも素人っぽいではないか・・・。とはいえ、さっきまで『婦人公論』や『主婦と友』を意識しながら「ストレス解消法」について延々と文字を羅列していた。しかし起承転結の「起」のところで相当文字数がいってしまい、このままでは短編小説のようになりそうだと思い、なぜかいきなり消すことにした。まさにポンピーのなかで悪魔が目覚めた瞬間だった。その悪魔は無慈悲な笑い声を立てたかと思うと、次の瞬間には保存もせずにワードをワンクリックで閉じてしまった。ケケケ。まさに悪魔である。自分が何時間も精魂かけて考えた文章を思いつきで消すなんて、まったくもって自虐行為であるが、そこにはたしかな快楽があった。(断っておくがMではない)

ということで今日はポンピーの「ストレス解消法」なんてやめて、ある友人ついて話したいと思う。他人のことをああだこうだと言うのもなんとなく心苦しいが、ネタが尽きたので友人を売ろうと思う。ケケケ。まさに悪魔である。

ではその友人をBとしよう。(断っておくが頭文字ではない)ある日、ポンピーとBはBの下宿先の部屋でテレビを見ながら酒をちびちびと飲んでいた。時間は真夜中で二人ともけっこう飲み疲れていて会話もあまりなかったと思う。テレビではB級の古いフランス映画が流れていた。内容は簡単に言えば、フランス貴族の繁栄と衰退を貴婦人の視点から描いた物語だった。けっこう派手に濡れ場のシーンがあり、ポンピーとBは疲れていたが見ずにはいられなかった。なにせ貴婦人がコケティッシュな上にチャーミングだったのだ。まさに中世の紋舞らんである。

と、ここまでは別に何ら問題はないのだが、しばらくするとBの様子がおかしいのである。ポンピーが濡れ場をかぶりつくように見ている横で、激しいクシャミを連発するのだ。ポンピーは寒いのかと思いクーラーを切ってやったが、それでもなおBのクシャミはとまらなかった。ポンピーは飲み疲れているのと濡れ場に集中できない怒りと生来の短気な性格とで「ふざけるな!このハクション大魔王め!」とBを罵った。Bはしょんぼりとして鼻の穴にティッシュをつめたが、それもすぐさまクシャミによって空しく宙にふっ飛んでいた。結局、クシャミはとまったかと思うと、また出るという感じで映画が終わるまで断続的に続いた。それにしても奇妙だった。ポンピーが知っている限り、Bは鼻炎持ちではなかったし、もちろん日頃からクシャミを連発するような奇天烈なキャラでもなかった。

その日は疲れていたので理由も訊ねず寝てしまったが、後日そのことを思いだしてBに訊ねると、Bは恥ずかしそうにしながらも理由を話してくれた。(たしかそのとき、誰にも言わないという条件でポンピーはBに教えてもらったのである。つまりこのコラムはぎりぎりセーフである。これは言っているのではなく、書いているのだ。ケケケ。まさに悪魔である。3回目のテンドンである)

で、Bのクシャミの原因だが、これが面白いことに神経性習癖の1つなのだという。神経性習癖というと聞こえが病的で、なんか仕方ないなぁという感じがあって、なおかつそれをベラベラと書いているポンピーの人間的評価が下がりそうなので、言い換えるが、単なる性癖である。要するに、Bはエッチなことを想像したり見たりすると、それがスイッチになってクシャミを連発するのである。まったくアホである。なにが神経性習癖だ!このハクションエロ魔王め!

と、ここまでせっかく書いたので、どうせならそれにまつわるBの話を書こうと思う。Bはこの性癖を一度だけ女の子に言ったことがあるらしいのだが、それを言ったおかげでえらいことになったらしい。その性癖を告白した女の子というのが、Bが17歳のときに初めてまともに付き合った女の子(仮にAちゃんとしよう)だったのだが、その告白のおかげでBがクシャミをするたびにAちゃんはBのことを侮蔑した白い目で見たらしい。バンビのような円らな瞳がゾンビになったらしい。しかしBのことを考えるとなんともかわいそうな話である。17歳の男と言えば、寝ても覚めても女の子で、24時間メスの裸体を想像しながら空想エッチをしているような年頃である。そんな元気な年頃に自分の彼女を見て、エッチなことを想像しないというのが無理である。案の定、BはAちゃんの前でクシャミを頻発したらしい。アーメン。そして極めつけが、初めて2人でラブホのベッドにあがったときである。もはやBの妄想は臨界点を突破し、クシャミが湯水のごとく出たらしい。もちろんムードなどベルリンの壁のごとくきれいに崩壊し、Aちゃんの怒る声さえ聞こえないくらいクシャミを連発したそうな。ラーメン。

それからというものBはこの性癖をひた隠しにしてきたのである。もちろん苦い経験もあって、どれだけ心を許しあった歴代の彼女たちであっても絶対に言わなかった。クシャミが出たときは「風邪じゃ、ボケ!」の一言で黙らしていたらしい。まったくもって立派な男である。でも歴代の彼女たちはきっと「風邪ならセックスすんなよ」と心のなかでツッコんでいただろう。

にしたってBは詰めがアマアマである。そこまで徹底して隠してきたのなら、どうしてポンピーなんかに話すのだろうか。(ちなみに彼が話したのはポンピーが2人目らしい。)そんなに口が堅そうに見えたのだろうか。悪いがポンピーは着ている服もだるだるだが、それに負けず劣らず口許もだるだるなのである。冷やしソーメン。

しかしこのお粗末な話に1つ救いがあるとすれば、それは教訓があることだろう。その教訓というのは、「秘密というのは自分のなかにだけあるものが秘密であって、たった1人、たとえそれがどれだけ信用のできる人間であろうと、秘密を話してしまった途端に、それは姿を変えてコラムのネタになる」ということである。とにかく知られたくないことは口をつぐみ決して他人に話さないことである。ましてやネタのすぐ尽きる自称コラムニストは要注意である。ケケケ。まさに悪魔である。

(*すべて紛れもない真実であるが、上記の内容には一点だけフィクションが存在する)


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